「朝日」と「亀の尾」は、どちらも、明治時代に生まれた古い在来種です。
今では、ほとんどの人が知りませんが、かつては、西日本では「朝日」、東日本では「亀の尾」が広く作付けされていて、「西の朝日、東の亀の尾」という言葉ができるほど、当時の美味しいお米を代表する二品種だったのだそうです。
現在の、良食味米と言われるている美味しいお米の代表「コシヒカリ」や「ひとめぼれ」「つや姫」などのルーツを辿って行くと、やがて「朝日」と「亀の尾」へ辿り着きます。
また、お米アレルギーが、出にくいといわれている「ササニシキ」や「日本晴」の先祖にもあたる品種であり、現在、国内で生産されている、ほとんどすべてのお米は、この「朝日」と「亀の尾」二つの在来種を、ルーツに作られてきたのだそうです。
Green Spoon Rice fieldでは、かつて西日本を制覇していた在来種「朝日」と、同じく、東日本を制覇していた在来種「亀の尾」を復活させました。
お米には「うるち米 」と「もち米 」の二種類がありますが、現在、私たちが食べているお米は、「もち米」ならではの特性であるモチモチとした食感や甘味などを「うるち米」に多く持たせるために、人工交配などの技術によって、品種改良されてきたお米がほとんどです。
甘くて冷めてもモチモチするなど、味の旨味を求める消費者や、病気に強く、短期間で多くの量を収穫できるようにと、栽培の効率化を求める農家、そして、スーパーや量販店の低価格競争に応じるために、供給面での安定性を求める流通業界など、実に多くのニーズに品種改良の技術は応えてきましたが、こうした、私たちがご先祖から代々、長いこと食べ続けてきた「在来種」のお米とは、異なる「でんぷん」の組成をしているお米を食べると、消化不良やアトピーなどの「お米アレルギー」を発症する乳幼児や子どもたちが増えてきています。
お米は、主に「水分」「でんぷん」「たんぱく質」「脂質」「ミネラル」でできていて、なかでも、「粘り」と「硬さ」のバランスを左右するのは、成分のうちの70%を占める「でんぷん」です。
そして、この「でんぷん」は、構造が少し異なる「アミロース」と「アミロペクチン」という二種類から構成されています。
アミロース | アミロペクチン | |
もち米 | 0% | 100% |
うるち米 |
15 〜 35 % | 65 〜 85 % |
上の表で「 もち米 」の値を見ていただくと、「アミロース」が0%で、「アミロペクチン」が100%となっていますが、「 もち米 」がもつ特有の粘りや甘味は「アミロース」の比率が少ないほど強くなります。
昔ながらの「在来種」のお米の「アミロース」は、20〜25%程度と高めなのに比べ、現在、最も人気のある「コシヒカリ」は、15%前後と低くなります。
さらに、「アミロース」を10%前後まで、低く押さえ込んだ「ミルキークイーン」は「 低アミロース米 」と呼ばれています。
お米には「うるち米 」と「もち米 」の二種類があると言いましたが、ひと昔前までの日本では「もち米 」は、お餅やお赤飯などにして、お正月やお祝い事などのおめでたい「 ハレの日 」に食べる特別のご馳走だったのです。
甘味が強く糖度が高い「もち米 」は、消化や身体に負担がかかることを昔の人は経験的に知っていて、日常の「 ケの日 」の食卓では、毎日食べても負担の少ない「うるち米 」に、麦や雑穀などを入れ一緒に炊いて食べていたのです。
また、甘味も強く糖度も高い現代のお米は、血糖値を上げやすいために身体への負担が大きく、全国的に糖尿病患者が急増した原因の一つにも、なっているのではないかといわれています。
一方で、「在来種」のお米は「アミロース」が高い分、糖化が進みにくいために、消化や吸収もゆっくりで身体への負担が少なく、また、「お米アレルギー」も出にくいといわれています。
しかし、こうした「在来種」や、原種に近い稲は、今の稲に比べとても背丈が高いため、収量を上げようと肥料を沢山与えると実の重みで、すぐに倒れてしまいます。
戦後、急速に進んだ大量生産と栽培の効率化の波の中、お米の収量を増やすためには、化学肥料が多投入されるようになりましたが、そのためには、稲が倒れないようにする必要があり、稲の背丈を低くする品種改良が次々と進められてきました。
その結果、今日では、栽培に手間がかかる昔ながらの「在来種」を作る農家は、ほとんどいなくなり、こういった昔ながらのお米は、たいへん希少な品種になってしまったために「幻のお米」といわれています。
Green Spoon Rice field では、日本のスローフードの原点ともいえる、伝統食のお米をもう一度、見直すために、現在では、希少ともなった「幻のお米」を復活させました。
「幻のお米」の上品で素朴でありながらも、滋養に富んだ深い味わいを、どうぞお楽しみ下さい。